漫画業界の闇見たり?佐倉色『とある新人漫画家に本当に起こったコワイ話』を読んでみた

2019年8月14日

少し前に話題になった佐倉色先生の『とある新人漫画家に本当に起こったコワイ話』を今更ながら読んでみました。レビューがてら紹介します。

※この記事は2017年に一度ブログで公開し、ドメイン失効→サルベージ→別ドメインにて復活させた過去記事です。

『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』とは

漫画家1年目(当時)のフリーランス漫画家・佐倉色(さくら しき)先生による、飛鳥新社から出版された漫画業界暴露漫画あるいは漫画家のエッセイ作品です。

いつの間にか、AmazonのKindle Unlimitedの本に入っていました!Kindle Unlimitedに加入している方は是非一度読んでみてください〜

ざっくり要約

思いっきりざっくりまとめると、兼業漫画家1年目の佐倉先生がwebで描いていた漫画をKADOKAWAの少年エースと契約して掲載することになり、担当編集者ボーノ氏とのやりとりで起こる度重なるトラブルからの精神崩壊(寸前?)に至りエッセイで再起するまでのお話です。

実際にあったこと

・打ち合わせの日にちを間違えられる、新幹線やホテルの予約がされていない
・確認事項など再三聞いても返事が返ってこない
・応募者全員に送るカラー色紙を100枚程度の予定から1600枚を超え。対策なし、度重なる確認漏れでどんどん増える
などなど。

出版元は揉めたKADOKAWA...ではなく、飛鳥新社

出版社は佐倉先生が追い詰められていた時に手を差し伸べたらしい飛鳥新社。飛鳥新社は佐倉先生の話を元にこのエッセイ漫画を遂行し事実確認は行なっていないとのこと。KADOKAWA側からは公式として何も発言していないようですが、ねとらぼ(ニュースサイト)側からは事実確認の要求アリ

作家さんとのトラブルが絶えない印象のKADOKAWA

KADOKAWAさんってどうもよくトラブルで名前あがる印象ですね。今回の『とある新人漫画家~』にもあったカクヨムでの内情暴露(ろくごまる氏による『カドカワ 富士見と独占契約したけど本が出ないハートフル物語《ストーリー》』をはじめ、『実録。ぼくはこうしてソシャゲを潰した。』など)が有名になっています。まあ大手で母数が大きいのだから多少は仕方ないといえばそれまでなんですが。

ちなみに、つい先日のKADOKAWAの株主総会でもこの佐倉色先生の件と思われる例を上げて「作家の使い潰し」をどう思っているかを質問された方がいたようです。

ちなみにこのツイートを投稿している、KADOKAWA株主総会のツイート実況をしていた方のブログ記事がこちら。面白いし興味深いです。関係ないけどアイコン可愛くてすき。

まとめ。結局この漫画は面白いの?

まず面白いの定義から入る必要がありますが(笑)、「面白い」という言葉には本来「①楽しい・愉快」という意味だけでなく「②興味深い」という意味もあります。(他にもいくつかある)しかし①の意味だけで考え、「面白くない」という感想を書く場合もあります。

蛇足ですが少し前に、同人作家に「面白くなかった」と言ったファンがいてちょっとした言い合い?がツイッターでありました。ファンとしては「シリアスだったんですね」という意味だったらしいが、作家さんは「つまらなかった」という意味で受け取り落ち込んだという話。私としては「面白くなかった」は言葉が足りなすぎるだろ思いましたが……はい、ほんと蛇足ですね。

興味深いという意味でも面白い

コワイ話のエッセイですし、まあ「愉快」な話ではないです。人の不幸でメシウマ~な人でもない限り。ただこの業界で“よくある話“らしいので「興味深」くはあるな、と私は感じました。最近ではこういった業界暴露をする人も増えてきましたが、それでもエッセイ漫画としてちゃんとまとまっているのは珍しい気がしますし(いや、あるかもだけど)

「こええ……こんなん本当にあるの?あっていいの?」と思って読んで、自分の業界の有り難みを噛みしめるなり、明日は我が身と気を引き締めるなり、自衛手段を考えるなりすれば良い作品だと思います。私は今の所フリーランスなので「契約書だいじ。メールで言質とるのだいじ」と改めて思いました。

作者自身も書いてますが、とにかく文字数は多いです。またこういった酷い時期の話がメインなので楽しい話ではないです。なので気分が沈んでいる時に人の愚痴聞くと余計沈む、という人は辞めておいた方がベター。

思ったことという名の蛇足(無駄に長い)

ねとらぼの反論があったり事実確認がされていないこともあり、全てを鵜呑みにするわけにもいかないのですが(作者自身、当時はまともな精神状態でなかったと描いているし、たとえ理路整然と言われたことでも否定を恫喝と捉えてしまうことなどもあると思います)し、少年エースからも謝罪文が掲載されていることもあり大筋としては事実であろうと言われています。

作家と編集者の相性などもあると思いますが、作家と編集者・出版社側のトラブルが多いことも事実です。「編集者が全面的に悪い」とか「漫画家が頭おかしい」とか、どちらか一方が絶対的に悪い、なんてことはないと思います。もちろんケースによっては一方が悪いこともあると思いますが、どちらにせよ片方が全面的に悪いのが普通、なんて一般論には絶対にならない。

だからこそこういったトラブルの話を聞いた時に「やっぱ編集ってクソだな」「コミュ障引きこもり上がりの漫画家(作家)はこれだから」みたいな決めつけは良くないと思うのです。まあ正直なところ、何でもネットで暴露すればいいってわけじゃないとは思いますが。全部メールやら会話録音や振り込み記録の記録を残しておいて出るとこ出る作家さんもおられますし。

どちらにせよ色紙100枚200枚の予定が1600枚(実際には1700枚を超えていた)になり、それに関して何も対策を打たず無償で(最終的にはいくらか払われたらしい)描かされたのは事実なようなので、これはあまりにもひどい。

しかしこの話も「漫画家なら当然」のような反応があって驚きます。漫画家なら数百枚漫画描いてもネームでボツったら無償労働、それが普通、など。サラリーマンのように時間で給料が発生しているわけではないし、これは本当に異常。販促なら自サイトに誘導して限定イラストや漫画を載せれば良いと思うのですが。

単行本を売りたいというなら例えば◯万部売れたらリクエストイラスト●枚描くよ!とか。(よくTwitterであるやつ)

ちょいちょい出てくるこういった業界暴露ですが、本当になんだかあちこちに闇が転がっているなあと思う次第です。