【書評】わかつきひかる『文章を仕事にするなら、まずはポルノ小説を書きなさい』を読んでみた【感想】

2019年8月11日

わかつきひかる著『文章を仕事にするなら、まずはポルノ小説を書きなさい』を読みました。

※この記事は2017年に一度ブログで公開し、ドメイン失効→サルベージ→別ドメインにて復活させた過去記事です。

同著者による『生業としての小説家戦略 専業作家として一生食っていくための「稼げる」マニュアル54』(レビューはこちら)を読んでとても読みやすかったのと、わかつきさん自身に興味を持ったこと、そしてなにより文章を仕事にしている・したいので手に取って見ました。

『生業~』を読み終わって翌日に発売と知った時は、もう天から買えと言われているのかと思いましたね。まだkindle版はないようです。出てました。

結論としては。

読んでよかった。これはとっても興味深いです。内容はタイトルの通り、文章でやっていくならポルノ小説が一番手っ取り早いし稼げるよ、というお話ですね。

わかつきさん自身が書いた官能小説も1話入っています。これは電車の中とかでは読めない類の本です(笑)背後に気をつけて読みましょう。

わかつき氏が一番本を出しているフランス書院という出版社でのレーベルをはじめ、

・「フランス書院文庫」:官能小説(オヂサンが買っているようなリアルな官能小説)

・「美少女文庫」:ジュブナイルポルノ。簡単に言って男性向けエロライトノベル

・「プラチナ文庫」「ティアラ文庫」:ジュブナイルポルノの女性向け。女性向けのエロライトノベル

・告白手記

・スポーツ新聞の連載官能小説

などの傾向や作風が紹介され、そこに文章を掲載する難易度や読者の年齢層などが記されています。

小説家になろうなどの投稿小説サイトを見ても、エロライトノベル書く人はかなり多いし、簡単にデビューできるなんて「そんなまさか……」と思いますが、その疑問にもわかつき氏は答えています。

曰く、上記レーベルに応募してくる作品の9割はポルノではない、ただエロが入っているだけの小説だそうです。誇張しているのかもしれませんが、実際に本の中で「こんなの」と挙げられていた例はどれも文章を書きなれているようには見えないやらかし方でした。あれが誇張なしの事実なら本当に容易いかもしれん。

あと割と女性向けに書かれている本なのかな?と思いました。わかつきさんが女性だからなのか、あるいは男性が文章を仕事にする時ポルノ小説は真っ先に思いつくのか、女性で文筆家を目指す人向けに話が進んでいる感じがしました。

とはいえ、「女性でも男性向けが書けるよ!」「女性でも不利・不利益ないよ!」を私が大げさに受け取っただけかもしれませんし、文章を仕事にしたい男性にも十分役に立つと思います。

1円ライターは稼げない・次に繋がらないは本当

私自身1円ライターであり趣味で二次創作小説やっているので分かりますが、1円ライターという仕事は本当にクソ…失礼、稼げないし次に繋がりません。そもそも1円ライターって言いますけど、1文字1円ならマシな方です。クラウドワークスの募集案件見れば分かりますが、1文字0.1円や0.2円なんてザラにあります。

いいとこ0.5円~1円で、つまり1円てかなり良い方です。もちろん量を生産できたり信用度が高くなったり(継続とか〆切遵守の関係)、記事内容によってはもう少し上がりますがせいぜい3円くらいでしょう。

しかしこの本で紹介されているポルノ系文章では1文字3円の仕事が「最低」単価の仕事でした。あれ、悲しくなってきたな……

どのジャンルでもどの時代でもポルノはウケる

また私も二次創作をしてきた人なので分かりますが、文章力低くてもエロが入っただけで評価してくれる人が多いのも実感しています。pixivなどで二次創作小説をupすると、R-18の方が断然ブクマされる確率上がります。結構ひどい文章でもブクマされてびっくりします。

普通に好きなCPを検索して人気順にしても、R-18なだけで大してうまくない文章が上にあったりして、「エロだったらなんでも良い人が一定数いるんじゃ……?」と思っていました。なので文章力低くてもエロが書ければOKというわかつき氏の主張、正しいと思います。みんなどんだけエロ求めてるの……( ゚д゚)

ネットに溢れてるのにわざわざ買うの?

これ。私とっても疑問でした。わかつき氏がその業界に入ったのは20年前だそうですし、確かにその頃は買う人が大勢いたでしょう。でも今は、なろう(小説家になろう:小説投稿サイト)にもR-18専用ページがありますし、いくらでも無料で読めるエロ小説ってネットに転がってます。わざわざ本を買う人いるのかな?と。わかつきさん曰く、コアなファンがついて、レーベルの新刊全て買うような人がいるのだとか。それはすごい……

まあ紙の本とネット小説は読む層が違う、と聞きますし、つまりそういうことなんでしょう。私自身は両方読むので盲点でした。例えばエロじゃないですがラノベの『Re:ゼロから始まる異世界生活』はなろうで人気のネット小説。書籍化もしましたがネットには公開されたままなので、全部無料で読めます。

なのに紙の本も売れている。イコール読む層が違うorネットでファンになった人が文庫も買って応援している、のどちらかあるいはどちらもでしょう。 ※文庫は加筆修正されてるので全く同じではないです

まとめ

文章書いて稼ぎたい!って人には本当オススメ。『生業としての小説家戦略 専業作家として一生食っていくための「稼げる」マニュアル54』と合わせてフリーランス文筆家見習いには役に立つのではないでしょうか。

お仲間の1円ライターさんなら「いける!」って考えると思います。エロの書き方なども分かりやすく説明されているので(そんな話題なのに真面目な文章なのが違和感ありますが)、参考書的にも非常によろしいかと!

蛇足:私が挑戦しようと思ったジャンル

ちなみに一番私ができそうだなと思ったのはラノベ系の男性向けですかね……。乙女系は自信ない……けど夢小説みたいな感じと思えばいけるかも?

※夢小説:二次創作小説の1つで、キャラ×自分orオリキャラの話。つまり好きな作品に自分の考えたオリジナルキャラを入れて話を進める夢のような小説です。基本的には女性向け。この小説が好きな人を夢女子と言い、BL好きの腐女子とは一線を画する。

個人的には可愛い女の子の百合が好きです。でもほんわか百合ならともかく、百合エロって需要あるんですかね?こう言うのどうやって調べれば良いんだろう……どちらかといえば男性向けだと思うんですが。

この本でも触れていましたが、乙女系小説ってエロ必須な割にエロに至るまでのストーリーが長くてかったるいんですよね(失礼)それよりは男性向けでさっさとヤってほしいというか。エロを求めている時にじれじれとした恋愛話いらんわ、って思っていました。

が、本を読んで読者層に納得。読んでいる人は現実を忘れたい30代~60代の女性なんだそうです。キラッキラしたお姫様王子様が出てくる一昔前の少女漫画に+αで甘やかなエロを求めているみたいなので、私には理解できませんでした。残念。

一番意外だったのは、女性の方が調教や陵辱モノを書くということ。私はこの2つ、とくに陵辱系苦手なのでとっても意外でした。けれど女性を可哀想と思わず痛めつけられる、痛めつけたいという心理・傾向があるという理由を聞いてちょっと納得。女の敵は女ってやつですかね……。

Posted by おとみね